本書は、中四国を中心とした中山間地域のムラの現状のルポだ。
中山間地域のムラは、農を考える上で常に「最前線」にさらされている。
古来、厳しい自然環境の中で農業を営み、食料を供給しながら、日本国民を、そして日本の国土を支えてきた地域でもある。
時代が移り変わり、今「ムラをなぜ残す必要があるのか?」と問われている。
この問いかけに対し、食料自給率を高めるとか、農業・農村の多面的機能を守らねばならないといった回答は、間違いではないだろう。が、なぜか空々しく心に響かない。
聞けば聞くほど「自分たち」とは無縁の、どこか他人事のように感じてしまう。
国民の合意を得るために、無理をして数値に換算する、経済価値に置き換えるという手法は、多少の危機感を煽ったとしても、所詮は自分のことに置き換えることはできないということではないだろうか。
本書には、数値や理屈ではない、現在の「等身大のムラの姿」が描かれている。
ムラは問う。この問いかけを真摯に受け止め行動に移すにあたり、昨今の農業ブームに惑わされることなく、地域を理解しサポートする、あるいは地域に移り住む際に手に取って欲しい良書である。